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もし高校野球の女子マネージャーがコグレ・いしたにの「マキコミの技術」を読んだら(後編)

前編はこちら

まず「コツコツ「継続」によって土台を作る」ためにおこなったのは次のことだ。

「部員たちが出たくなるような練習メニューを作る」

野球部にはこれまで、練習には出ても出なくてもよいという雰囲気があった、おかげで多くの部員たちが、いつも当たり前のようにサボっていた。

野球部の練習をなんとか生産的なものにする。やりがいのあるものにする。魅力的なものにして部員たちが進んで参加できるようにする - それが課題であった。

そこで練習に試合と同じ要素を持ち込むことにした。それはつまり「競争」「結果」「責任」である。これらを元に「チーム制」の導入やパソコンによるロードワークの日々の成果の分析等をおこなった。必要ならグラフ化して渡すようにもした。チームにはそれぞれリーダーを決め、それぞれの管理運営はそのリーダーに任せるようにした。チームに何が足りないかを考えさせ、何をすべきかを話合わせた。つまり「責任」を組織化したのである。

パソコンを使いデータを蓄積・分析することで「敏感に「変化のきざし」を見つけ、対応する」ことにも対応することができた。

ブログやツイッターを使うようになってからは、ぼくは、その人がどこの会社に所属している人か、ということを気にしなくなりました。ネットにあるログがその人のすべて、とまではいきませんが、ログの積み重ねはうそをつきません。信頼できる人であるかそうでないかは、これまで継続してきたものをみればわかります。(「マキコミの技術」P120)

ブログやツイッターというものがどんなものかはわからないけど、「ログの積み重ねはうそをつきません」の部分には納得できたみなみであった。

この練習方法を始めてしばらくしたある日、陸上部の沙也香がみなみのところにやってきてこう尋ねた。

「どうして野球部のみんなは、あんなに真面目に練習するようになったの?」。彼女は真剣な眼差しでそう尋ねた。

みなみは知らなかったのだが、この頃までに、野球部の変化は校内ではちょっとした話題になっていたらしい。練習への出席率があれほど悪かったのが、今ではみんな当たり前のように出てくるのなった。それも積極的に、むしろ楽しそうに取り組むようになった。それが、他の部からは興味の的になっていたのだ。

この時あの言葉を思い出した。

「コミュニケーションは「ギブ&ギブ」の精神で」

そこでこれまで得た知識と体験を生かして他の部のコンサルタントを始めることにした。するとそれはすぐに評判となった。コンサルティングの依頼は陸上部にとどまらず、他の部のキャプテンやマネージャからも相次ぐようになった。

また第一章でも「下心は見透かされる」と述べましたが、情報を出す代わりに何かを得ようと考えても、たいていはうまくいかないものです。考え方としては「ギブ&テイク」ですぐに回収しようとするのではなく、見返りを求めずに与え続け、情報の発信を続けていく「ギブ&ギブ」が大切になります。(「マキコミの技術」P147)

この言葉を胸に、みなみは一つひとつ丁寧に答えていった。そして、その取り組みは、いくつかの部で着実に成果をあげていった。

英語で言えば「ペイ・フォワード」(Pay it Forward)となり、「次の人に報酬を渡そう」といった意味合いになります。これは同名の映画があります。映画「ペイ・フォワード」は、受けた恩を施してくれた相手に直接返すのではなく、別の誰かに対して、そのときの自分ができること(また、得意なこと)をすることで返す、その誰かはまた別の誰かに・・・という運動によって社会をよくしていこう、という考えかたがテーマになっている作品です。(「マキコミの技術」P148)

みなみのコンサルティングは学校という社会に貢献していったのである。しかし、この時はまだみなみは周りのみんなを「巻き込んでいる」こと、そしてみんなは「巻き込まれている」ことには気づいていないのであった。

******

ついに夏の大会が開幕した。それがやがて高校野球に一大旋風を - そしてイノベーションを巻き起こす、「程高伝説」の始まりだと気づく者は、誰もいかなかった。

ユーザを企画に巻き込んだり、ユーザの声を聞いて行動を起こしたりと、企業のマーケティングプランとしての「マキコミ」を考えるとき、最初に行うべきことは、いわば「すり鉢」の設計です。
まず、ユーザーに認知してもらい、興味を持ってもらい、動いてもらうためのタッチポイントを可能な限り広く取ります。そして、そのどこかの端っこにでも引っかかったユーザを、最終的にゴールである自社サイトにまで連れていく流れを考えます。(「マキコミの技術」P206)
タッチポイントの設計では「ネタ」と「つながり」の二点から、ユーザに動いてもらうことを考えます。(「マキコミの技術」P207)

みなみたちのチームの「ネタ」は「ノーバント・ノーボール作戦」である。

監督の加治は送りバントがいかに古びた戦法で、非合理的で、しかも野球をつまらなくさせているかいやというほど感じていた。「ボールを打たせる投球術」も、そのやり方がいかにピッチャーの成長を妨げ、ひ弱にし、またゲームを長引かせ面白いくないものにさせているか常に感じていた。

そのため、このチームは「ノーバント・ノーボール作戦」で戦うこととなった。そしてもしも、この戦法で勝つことができれば高校野球界にとって伝説の存在となるかもしれないということが、加治のモチベーションとなっていた。

この作戦はみごとに当たった。なんと準決勝までコールド勝ちで進むことができたのである。

毎試合後、程高には多くのマスコミが取材が押しかけた。インタビューのポイントは「ノーバント・ノーボール作戦」である。案の定、インタビュアーは「ノーバント・ノーボール作戦」を中心に取材してきた。

しかし、みなみはまだやらなければならないことがあると感じていた。それは「つながり」であった。

ユーザとのタッチポイントを増やす最良の方法は、ブログなどでコンテンツを蓄積していくことです。これは、いわば時間を味方につけたマーケティングをすることになります。(「マキコミの技術」P208)

チームのことばかりやっていたみなみはブログをやっている時間がなかったのである。「大会が終わったらブログを始めなきゃ。あと、ツイッターというのもやってみようかしら」とぼんやり考えていた。なんにしても、まだ大会は終わっていないのである。

**********

準決勝では敵校にはプロ入りが有力視されている本格派の投手を擁する私立の強豪に苦戦したり、決勝戦の前の晩にはマネージャの夕紀が死んだりといろいろあったが祐之助が打った右中間ヒットが見事サヨナラヒットとなり程高に初優勝をもたらしたのであった。

それから一週間後、程高野球部は、甲子園の開会式に臨もうとしていた。するとそこにテレビ局のカメラクルーがやってきた、入場直前の選手たちに取材を始めた。

女性のインタビュアーは程高キャプテンである二階正義にインタビューを始めた。正義にあれこれと質問していたインタビュアーは、最後にこんなふうに尋ねた。

「甲子園では、どんな野球をしたいですか?」

それを見ていたみなみは、正義がなんと答えるのか、興味を持って見守った。

すると正義はしばらく考えた後、こう言った。

「ソーシャルメディアはマスメディアやリアルに替わるものというよりも、それらをつなげていくパイプのようなものだと考えるべきです。人と情報の流れる場所そのものがソーシャルメディアなので、そこだけで結果が出るわけではないのです。」

そう言うと、みなみの方を振り返り、ニヤっと微笑んで見せたのであった。

尚、最後の正義の台詞は「マキコミの技術」の211ページに書かれているものである。

マキコミの技術 マキコミの技術

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このブログ記事について

このページは、nagasawaが2011年1月10日 21:04に書いたブログ記事です。

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